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高さ 27.5 cm × 口径 10 cm
漆黒の天目釉が全身を包む本作は、光の加減によって墨色から紫がかった鈍色(にびいろ)へと揺らぎ、まるで静かな湖面のように周囲の景色をやわらかく映し込みます。艶やかな黒釉に散るわずかな鉄粉が星影のように瞬き、器自体が一幅の夜景を思わせる幽玄の世界をつくり出します。
中央に丸みを持たせた腰節(こしぶし)と、上下一対のラッパ形を潔く組み合わせた凜としたシルエットは、古典的な“筒花入”をモダンに再構成したフォルムです。余計な装飾を一切排し、黒天目釉の光沢と陰影のコントラストのみで美を語る――まさに“引き算の美学”が極まった造形と申せましょう。
黒天目釉は焼成温度と還元雰囲気のわずかな違いで発色が劇的に変わります。正元直作様は長年の経験をもとに、焼成のピーク温度をあえて僅差で上下させることで、釉層に鏡面の艶とほのかな透け感を併存させました。胴中央には薄く釉を削がれた箇所があり、そこにわずかに褐色の地肌が覗くことで、漆黒の世界に奥行きと呼吸を与えています。
黒天目花入の最大の魅力は、挿した花の輪郭と色彩を際立たせる「闇」の効果にあります。
彩りの強い花では、漆黒が背景となり花弁の色が鮮烈に浮かび上がります。
白や淡色の花では、黒釉に映る淡い影が花姿に奥行きをもたらし、静謐な余韻を添えます。
枝物や青物を合わせると、艶面に映り込む葉影が器と花材を一体化させ、床の間全体に涼やかな気配を生み出します。
口縁はほんのり外反りとされ、花留まりが良く落とし(竹筒や銅筒)も安定して収まります。高台は輪高台ではなくわずかに張りをもたせ、床置きにした際もしっかり安定。胴の中央節が自然な持ち手となり、水替えや据え直しの際にも扱いやすい点が嬉しい配慮です。
ご使用前に落としを入れ、器肌への水分過多を防いでください。
黒釉面は柔らかな布で優しく拭き、目立つ水垢や手跡はぬるま湯で軽くすすぐ程度に留めましょう。
研磨剤入りスポンジや金属たわしは、釉面に細かな傷をつけ艶を失わせる恐れがございます。
正元直作様の丹波黒天目花入は、漆黒の闇にほんのりと宿る光と影が、四季折々の花を一層美しく引き立てる“舞台装置”のような花器です。侘びの茶花から洋花の一輪差しまで包容力に富み、飾るたびに空間を格調高い静けさで満たしてくれることでしょう。どうぞ末永くお手元で育み、黒天目釉が深める艶と花影の競演をご堪能くださいませ。
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